2025.07.25

大阪・関西万博に出展、たくさんの方にAI診断システムを体験していただきました

はじめに

 

当社は2025年6月24日(火)から30日(月)の7日間、大阪市夢洲で開催された「EXPO 2025 大阪・関西万博」の大阪ヘルスケアパビリオン内『リボーンチャレンジ』において、「救命支援AI ERATS」の展示を行いました。

 

参考:【2025年6月24日~30日開催】大阪・関西万博 明日が楽しくなる町「スマートヘルスケアタウン」プロジェクト 出展レポート(大阪スタートアップ支援ポータルサイト)

 

大阪ヘルスケアパビリオンは”オール大阪の知恵とアイデアを結集し、「いのち」や「健康」の観点から未来社会の新たな価値を創造するとともに、大阪の活力・魅力を世界の人々に伝える”ことを目的とした展示パビリオンです。

『リボーンチャレンジ』ゾーンでは、400を越える大阪の中小企業・スタートアップがヘルスケア、SDGs、デジタル、ライフスタイルなどのカテゴリーに基づき、異なる26のテーマに沿って新技術を毎週入れ替わりで紹介しました。

当社が出展した第11週目のテーマは”明日が楽しくなる町「スマートヘルスケアタウン」プロジェクト”。ブース全体をひとつの街に見立てて「未来の駅」「未来のコンビニ」といったスマートヘルスケアを体験できる五つの空間が設けられ、その中の「未来の病院」エリアで”AIを用いた未来の救急診療”の展示を実施しました。

 

展示期間中、『リボーンチャレンジ』ゾーンだけでも連日1万人以上が来場し、盛況のうちに終わりました。
改めて当社ブースに足をお運びいただきましたお客様及び関係者の皆様に厚く御礼申し上げます。

 

 

 

展示内容

 

「全身検索型診断AI ERATS(ER Automated Triage System)」を展示。

本システムは、千枚以上のCT画像から異常部位を10秒以内に検出することができるAIシステムです。大阪急性期・総合医療センターをはじめとする十数院の医療機関との共同研究を通じ、現場起点の技術として研究開発を進めています。

 

救急で搬送されてくる重症患者は意識がないことが多く、CT撮影を実施して重要疾患の特定を行います。CT画像は、全身の場合には数百枚から時には千枚を越えますが、現状では1分1秒を争う救急の現場で医師が一枚ずつ目視で読影しなければなりません。これに対し本システムは、全身のCT画像を読み込んで病変のある画像を抽出することで、正確で迅速な画像診断をサポートします。

 

展示は説明パネルに加え、現場の救急医のインタビューを交えた映像、そして実際にAIを操作できるPCを用意しました。

来場されるお客様のほとんどが一般の方々となるため、AIシステムの紹介だけではなく、「日本の救急医療の現場」について知ってもらい、その上で本システムがどのように未来のAI診療に繋がっていくのかを直観的に体験いただくことに重点をおきました。

 

とりわけ、展示物は校外学習として多くの来場が予想されていた小中学生を対象にするものとして、普段目にすることのない救急の現場にふれ、救急医に興味を持つ、もしくは目指すきっかけになることを意識して選定しました。
これは、世界と比較して日本の救急医の数が不足している現状を反映した施策です。
全国で69(※1)の病院に救命救急センターが設置されていますが、医療施設に従事する救急科の医師の数は3,913人(※2)で、その割合は全医師のわずか1.2%にとどまっています。

※1 厚生労働省 救命救急センター設置状況一覧 [令和7年4月1日]より
※2 厚生労働省 医師・歯科医師・薬剤師統計 [令和4年12月31日]より

 

 

展示期間中の様子

 

出展初日は平日ということもあり、来場者数が読めず不安もありましたが、予想を上回る多くの方にご来場いただき、会場は大変な賑わいを見せました。

特に校外学習で訪れた小学生の団体や、ご夫婦・ご友人同士と思われる方々が、展示パネルや映像をじっくりご覧になり、その後、実際にPCを操作してAIシステムを体験される様子が多く見受けられました。全身のCT画像をもとに、頭からつま先にかけて体の構造を観察されたり、AIによってアラートが表示された部位に注目して損傷を確認されるなど、救急現場のリアルを体感していただけたと感じています。

 

また、当社代表の岡田と井上が来場した際には、小学生に対してAIを操作しながら「ここが肋骨で、肝臓がこれで・・・」と説明したところ、「どこを怪我しているの?」と興味津々に質問が返ってくるなど、印象的な場面もありました。

さらに、他のグループで「これ楽しい!」という率直な声も聞こえ、今回の出展の大きなテーマであった「子供たちに救急医療やAI技術に関心を持ってもらう」という目的を、ある程度達成できたのではないかと手応えを感じました。

 

週末には20〜30代のカップルやご夫婦、小さなお子様を連れたご家族が揃って展示をご覧になることが多く、リボーンチャレンジブースも一時的に入場規制がかかるほどの混雑となりました。世代を問わず幅広い層の方々に関心を持っていただく機会となりました。

 

 

 

 

万博出展に至った経緯

 

当社が今回、大阪・関西万博に出展するに至った背景には、公益財団法人大阪産業局が実施するスタートアップインキュベーションプログラム『起動』への参加がありました。

このプログラムは、関西圏の企業・大学・自治体のリソースを結集し、大阪・関西万博に向けて世界が注目する成長分野でスタートアップ創出を目指すものです。当社は、2023年に実施された第1期において応募総数173社の中から採択され、事業資金の提供に加え、専門家による6ヶ月のハンズオン支援を受ける機会を得ました。

 

この支援を通じて、我々の研究開発しているシステムを大阪から世界へと展開することを大目標として、自社売り上げを中心とした形への事業・資金計画の再構築、新規事業の開発、当社向けに最適化されたハードウェアの開発、協業先企業の獲得、といった様々な成果を得ることができました。そしてそこから、大阪産業局をはじめリボーンチャレンジの担当者の方々とのつながりもできました。

 

さらに出展の決め手となったのが、同じく大阪産業局が主催する『HeCNOS AWARD』の受賞です。本アワードは、ヘルスケアおよびカーボンニュートラル分野において、将来的な業界牽引が期待されるスタートアップを表彰・支援するもので、受賞企業には万博出展の機会だけでなく、事業推進に向けた追加支援も提供されます。

審査では、「万博という場を通じて、未来の救急を担う日本の子どもたちに普段は知ることのできない医療現場を体感してもらうとともに、世界各国から訪れる方々に日本の救急医療の高度さを発信したい」とプレゼンテーションし、高い評価をいただきました。

 

 

今後のfcuro

 

今回の万博出展を機に、これまで一部の研究機関における研究目的での導入にとどまっていた当社システムを、国内外のより多くの医療機関でご活用いただけるよう、技術力の一層の強化と現場との連携の深化に取り組み、社会実装に向けた検証フェーズを加速させてまいります。

特に、規制や制度の厳しさから、AIの開発・導入が他領域に比べて進んでいない救急の「診療支援」分野にフォーカスし、人とAIによるハイブリッドによる新たな救命体制の実現を目指します。そして、preventable death(防ぎ得た死)をゼロに近づけることを常に目標に置き、技術開発と社会実装の両面から継続して取り組んでまいります。

 

また、先述のとおり日本では依然として救急医の数が限られており、次世代の担い手の育成が急務となっています。こうした中で、子どもたちが医療やテクノロジーに関心を持ち、将来「救える命を増やす仕事」に就きたいと思えるようなきっかけをつくることも、私たちスタートアップが担う社会的責任のひとつだと考えています。

 

今後も、救命技術を発展させるとともに、その意義を広く伝える情報発信にも力を入れ、未来の担い手を育むきっかけを社会に届けてまいります。